薔薇のめざめ
薔薇の目覚め (ライムブックス) (2015/01/09) アシュレー マーチ 商品詳細を見る |
最愛の伴侶を、考え得る限り最悪な状況で失ってしまった二人の物語です。
ヒロインのリーア、彼女はとても強いです。
耐えることもまた強さです。
夫の裏切りを知りながらも彼女なりの理由で、孤独で侘しい夫婦関係を続けていました。
しかし夫が旅先で事故死したことから、彼女は女として人間として新たな人生を始めようと決意します。
ここで現れるのが、リーアの夫の親友で、夫の不倫相手の夫であるヒーロー。
ヒーローから見ると、妻と親友が不倫関係にあったのです。
ヒーローは事故死の知らせとともに不倫を知るので、打撃も二倍。
酷く攻撃的になり、前向きに人生を歩もうとするヒロインを非難し始めます。
あまりにも深く傷つけられてしまったが為に、同じく伴侶に裏切られたヒロインにも同じだけ傷つくよう求めるのです。
ふたりの行動は対照的で、ヒーローの柔さが目立ちます。
しかし彼女の強さに触れることで、ヒーローはヒロインに惹かれ始めるのでした。
中盤までは鍔迫り合いが続きますが、そこからは一気に物語が展開します。
人に裏切られて傷つくのは、自分の描いた理想を壊されたからなのでしょうか。
たしかにそういった一面はあるでしょう。
けれど本当につらいことは、大切な相手にとって自分の存在に価値がなかったと知ることなのではないでしょうか。
そしてその裏切りを乗り越える方法は、誰かに自分の価値を認めてもらうことなのかもしれません。
ヒーローとヒロインは、この物語において間違いなく被害者です。
そして不倫関係にあったヒーローとヒロインの伴侶もまた、加害者であり被害者であったようにも思います。
お互いの気持ちは本物でも、この時代において心から愛する人と一緒になることはとても難しかったはずです。
本意でない結婚も数多くあったことでしょう。
勿論、だからといって不倫が正しいことだったとは言いません。
自分を心から愛してくれる人を裏切ることだけは、人として越えてはならない線ですから。
ただ、あまりに悲しい関係だったと思えて、二人の心情がもっと読みたかったなぁとも思ったのでした。
話がそれてしまいましたが、ロマンス小説なのですけど恋以外のことにまで考えが及ぶような深い物語だと思います。
それほどの厚みはないのにとても読み応えがあって。
読み終えて完璧な幸せに浸れるという物語ではありません。
うまく言葉にできませんが、とても人間くさい物語です。
ヒロインとヒーローは互いに互いの価値を見出し幸せになることができるのでハッピーエンドには間違いありません。
けれど、ただのハッピーエンド物語ではないとそれだけは言いたいなと思います。
読んだ方はどんな感想を抱くのだろうと、とても気になる作品です。