雨が降ったら、ぼくを思い出して
文字が滲んでしまって先を読むのが大変だった
雨が降ったら、ぼくを思い出して (マグノリアロマンス) (2015/01/09) リサ・デ・ジョン 商品詳細を見る |
私は基本的にお涙頂戴の物語は好きではありません。
けれど、それ以上に何かを心に残してくれる作品は何よりも大好きです。
この作品はそういう物語だと思います。
何一つ漏らさずに語るべき作品だと思うのですが、それがとても難しい。
ヒロインの真っ赤に腫れ上がった痛々しい傷をまざまざと見せつけられるような序盤。
痛みを伴いながらも癒される中盤。
そしてヒーローの想いに泣かされ続ける終盤。
鼻かみすぎて痛いほどに。
余りに心に入りこんでしまったので、雨が降ったら私も彼を思い出すと思います。
そして雨が止んだら彼を思い出すでしょう。
心を開くというのは、心を閉ざした人間だけがすることです。
誰でも受け入れる門ならば、あえて”開く”と言うまでもないのですから。
傷を理解し、決して塩を塗り込まないと信じることが出来なければ、傷を見せることはできません。
労わってくれる人にしか、傷痕を見せることはできません。
それはつまり、同じく傷を負ったことのある人のことだと私は思うのです。
彼らが彼女を見つけたことは、彼女にとって非常に幸運なことでした。
だれもが優しいわけではないのですもの。
そして彼らが彼女を見つけたことは、彼らにとってもまた幸運だったことでしょう。
誰かの大切な存在になれることは、特別なことです。けっしてありふれたことではありません。
閉ざされた門の鍵を持っていても、相手が開いてくれることを待てるような人間でありたいと思います。
届くことを信じて声をかけ続けることができるような。
そしてかけられた声を信じ、門を開くことのできる人間でありたいなとも思います。
小さく波打つ湖面を見つめている時のような、静謐な気持ちです。
生き続けることは、強さの証。
読めてよかったなぁ。後日談(原書)もKindleにダウンロードしたので、ゆっくり読むつもりです。
リサ・デ・ジョンさん、ありがとう。